対談が始まりました。和やかさと
緊張感が混じりあいます。

アメリカの教育、刑務所、農業…
ついに医療まで投資の対象に…

宮崎

そうですね。一緒ですからね…。
異議を申し立てたりすると、愛国者精神に反するとか
レッテルを貼られたりとか、あるんですか?

ありますね。だから愛国者法とか秘密保護法というような政策は、
コーポラティズム(政府と業界の癒着主義)と双子なんです。
自由競争は寡占化して競争がなくなっていくと、
今度はファシズムとくっついて、さらに効率化へ…という流れになり、
じわじわと言論統制が進みます。
アメリカのジャーナリストはそれを肌で感じていて、
去年私が敬愛していた記者の一人もCNNを辞めました。
「もうオバマ政権のちょうちん持ちはいやだ、ジャーナリストとして、
体制批判できない職場にこれ以上いたくない」といって。

宮崎

本に書かれてますけど、国民がこのオバマケアの、医療制度そのものについて
空気のような存在でよく知らないとあります。
日本のマスメディアもそういう報道を全然しないし、
アメリカもきっとそうなんだろうと思のですが…。

その通りです。
オバマケアどころか、カーネギーメロン大学で行った調査では
民間医療保険の仕組み自体を理解している国民は
わずか14%という結果も出ているほどです。
ただ診療報酬体系で一本化している日本の国民皆保険制度と違い、
アメリカの場合は一人一人が違う民間保険商品を買っているので、
仕組み自体がとても複雑だということもあります。
こんなにシンプルだといっても、
日本で国民皆保険制度をちゃんと理解している人は少ないですよね?
こう考えてみて下さい。
入っている生命保険のしくみ、正確に理解していますか?
と聞いたらイエスと答える日本人は少ない。
アメリカの医療保険は民間商品ですから、
生命保険のような位置付けなんです。
私もアメリカに住んでいたとき、自分の医療保険の説明書を読んでも
よくわからなかったです。
複雑にすればそれだけ売りやすい、よく分からないけど
病気になって困るからとにかく払っておく…
免責があることすら知らず、病院から請求書が来てから
ショックを受けるなどといったケースが
とても多いですね。

宮崎

そうですね…オバマさんが一番初めの時、
“チェンジ”の演説で国民の夢を受けて当選しましたよね。
今度のオバマケアで6千万人の無保険者が救われる期待がありました。
堤さんが登場している対談を見ていると、
質問にそのことが必ず出てくるのですが? 
オバマさん、だんだん骨抜きにされているような……。
最初の志はどうなったのでしょう?

その質問は必ず聞かれます。
実は大統領選で、オバマ大統領には医産業複合体から
数十億円の献金がありました。見返りは政策で返すのがお約束ですから、
就任後はまず医療・金融業界の人を「回転ドア」で
政府に引き入れました。
これはオバマ大統領の人間性や志がどうといったことではなく、
アメリカの構造上の問題なのです。

オバマさんも医産複合企業から献金を…。
だから見返りにオバマケア

極端な話、誰がなっても志を飲み込んで政治家になるか、
無所属で資金不足のまま負けていくか…
というところまで政治が投資商品になってしまいました。
それを聞くと日本人はショックを受けます。
だってあんなにドラマチックな選挙をやって感動したのに!と。

宮崎

そうですよね。日本の民主党もあの時大勝利して、
新しい風が吹くかと期待した…。

はい、よく覚えています。
こっちも新しい風が吹くはずだったのが、
消費税増税や、TPP交渉の話を始めるなど、
何とも残念な展開になりましたね。

宮崎

だけど大きな矛盾が根底にあるので、
きれいにやりきることができなかった…。
オバマケアは、正確には2014年から
もう始まってるわけですよね?

そうです。
従来の保険加入者約1200万人が
以前の保険が廃止されたためにオバマケア保険に入りなおしています。
無保険だった人は、保健証は手にしたけれど
高い免責額が払えずに、罰金を払う方が安いからと
結局また無保険に戻っている人が多い。
結局今の時点では、無保険を減らすより
低保険を増やしたというのが現状ですね。
無保険の時よりお金はかかるけれど、かかれる病院は少ないし
保険適用の範囲も狭い、だから保険会社は儲かりますが、
根本的な問題は解決していないわけです。

2010年導入成立以降、保険料は2倍、薬価は4倍!

オバマケア成立後で、
薬の値段が2倍、3倍、4倍とぐんぐん値上がりしています。
さら月々の保険料が値上がりし、
高い人では以前の2倍になり、国民の怒りがオバマ民主党に向いています。
ただし一般の人は構造を見ているのではなく、
目の前の請求書を見て怒っているので、
そこが問題なんですが。

宮崎

わからない…アメリカのマスメディアがそのあたりを
批判的にというかリアルに伝えるようなことは
出来ないのでしょうか。

難しいですね。
アメリカの商業マスコミは企業に所有されていますから。
これは共和党でも民主党でも同じなのですが、
法案成立前には商業マスコミに沢山の広報費をまくので、
いいところしか出てきません。
これはもう秘密でもなんでもなく、数字データでちゃんと公開されていますよ。
共和党よりのマスコミはもちろん批判しますが、
これはもうスポーツと一緒で「政局」としてとらえられていますから、
純粋な意味での体制批判とは少し違いますね。

宮崎

そこが非常に深刻なところですね。

はい、すごく深刻です。
正確な情報を手に入れるのは年々困難になっています。
法案を読むか、一時情報に当たるか、現場の声を聴くしかないです。
オバマケアについては、現場の医師たちの声も届かないままに、
成立してしまったし。

宮崎

そこのところを詳しく伺いたいのですが、
アメリカの医師会の力はどうなんですか?

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