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今回のゲスト聞き手
1%の超富裕層が仕掛けた“オバマケア”で、
アメリカ医療は大崩壊! 話題の著書——沈みゆく大国アメリカを語る堤 未果宮崎 康

堤未果(つつみ・みか)ジャーナリスト。NY市立大学大学院で修士号 取得。国連婦人開発基金、アムネスティ・インターナショナル経て、米国野村證券に勤務中に勤務中に9・11同時多発テロに遭遇。2006年『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』で黒田清日本ジャーナリスト会議新人賞を受賞。2008年『ルポ 貧困大国アメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞、新書大賞を受賞。

宮崎康(みやざき・やすし)医師。東京大学医学部卒同。 東京女子医科大学、米国オハイオ州立大学にて臨床をへて、みさと健和病院にて一般内科及・糖尿病・内分泌疾患の専門医として従事。院長・理事長を歴任。現在は糖尿病や内分泌専門医の指導医。「九条の会会員。糖尿病と貧困の関連を分析「糖尿病と社会学」という切り口で疾患に向き合う。

宮崎

堤さんが書かれたこの本『沈みゆく大国アメリカ』は、衝撃的でした。
医療関係者ですら、にわかに信じがたいことが書かれています。
ぜひもっと多くの人にこの本に書かれている
アメリカの真実を知ってもらいたい!
そう思いまして今回、対談をお願いしました。

ありがとうございます。

宮崎

私たちが日本の医療問題を考えるうえで、
どうしてもアメリカのことを抜きに考えられない‥‥。
本の冒頭に、2010年4月に亡くなられたお父様(ジャーナリスト・ばばこういち氏)とのエピソードが書かれていて印象的です。
お父様は糖尿病で、人工透析されていて‥‥。
それで闘病中に国民皆保険のある日本で良かったとおっしゃって‥‥。

はい。父は最後3年間は週に3回人工透析を受けながら仕事を続け、
2010年1月に倒れて病院に運ばれてからは、
ICUと普通病棟を行ったり来たりの3か月間でした。
入院中、「国民皆保険制度がなかったら自分は悲惨な最期を迎えただろう」と
何度もつぶやき、「この国の宝であるこの制度を何としてでも守ってくれ」という
最期の言葉から、このアメリカ版皆保険制度「オバマケア」に
ついての本が生まれたのです。

宮崎

この本の大きな特徴は、オバマケア‥‥アメリカの皆保険制度も、
マネー資本主義の発展形であり、ついに医療も商品化されてきた。
そこを鋭く追求して書かれているところだと思います。

対談の日は雨。
青山のとある建物の中での
ワンショット。

おっしゃる通りです。読む人が読めばわかると思いますが、
この本は単なる医療保険の話ではありません。
80年代のレーガン政権以降、アメリカの1%の超・富裕層が、
石油、農業、食、教育、金融など、様々な領域を解体し、国家を
株式会社化していった流れの中のひとつなのです。
今回オバマ政権下で手をつけたのが“医療”だったこと、
そしてそれが今の日本にとって、他人ごとではない
分野の一つであることこそが問題なのです。


アメリカ版国民皆保険「オバマケア」の実態とは?!

「オバマケア」を単なる医療保険制度改革として単一にみてしまうと、
大局がみえなくなってしまいます。
日本では「皆保険制度?アメリカは無保険者が多いみたいだから、
日本と同じ制度にするのはいいことだ、オバマ大統領よく頑張りましたね」
という声がとても多いのですが、アメリカの「オバマケア」と
日本の国民皆保険は180度違うものです。

宮崎

ええ、そうですね。

この「医療保険制度改革」が出てくる前段として、ここ30年の
アメリカの変化をまず見てください。
リーマンショックで私たちも目の当たりにしましたが、金融業界が
以上に肥大化して強大な力を持ってしまった。
その結果各業界が寡占化し、資本主義本来の自由競争は
もはや機能していません。

宮崎

確かに、自由競争が効かなくなるほど寡占化してますよね。

はい。医療分野など、自由競争の段階はとっくの昔に終わっています。
寡占化した医産複合体が、政治もマスメディアも
買ってしまっている。そうした枠組みの中で、
「全国民に民間の医療保険という商品を強制加入させる皆保険」として見てみると、
日本の国民皆保険とはまったく違うことがわかりますよね。

宮崎

定期的に病院で開いている読書会に参加しているドクターがこの本を読んで、
医療従事者も患者も誰も幸せにならない皆保険制度‥‥
これはホントなの?と言うんですよ。
歴史的背景として国づくりが巧妙に変えられてきたという部分を
広く理解しないと見誤るんじゃないかと思いますね。

「こんなのは誇張ではないのか?」
「医者がそんなに苦しんでいるわけがない」
と言う方も中にはいらっしゃいますよ。
本当に患者のためになる制度なら、医療現場を誰よりも
よく知る医師たちはみな賛成したでしょう。
でも残念ながら実際は逆で、アメリカ国内の医師たちの大半が、
党派に関係なく、この制度に強い危機感を持って反対していたのです。
しかし日本の社会保障制度が変えられる時と同じで、
アメリカでも現場を知る当事者たちの声は国民には届かなかった。
そして何より、アメリカが過去30年にこんなにも変わってしまったことが
日本ではほとんど報道されず、そこが抜け落ちていることが大きいです。
日本では医療は「社会保障」という位置づけですが、
アメリカではずっと昔から医療は「商品」です。
ですからこの制度もいきなり出てきたわけではありません。
いろんなものを商品化していって、今回はたまたま医療保険だったのです。
教育、刑務所、農業でも同じことが起きている‥‥
そう理解するとそんなに驚くことはないです。
ビジネスモデルは全部一緒ですから。

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