先進医療のアメリカ…
しかし薬剤副作用訴訟は物凄いことに…

宮崎

確かに知らされてないですね。製薬会社が強いんですね。

寡占化した業界はどこも強大ですよ。
「(株)貧困大国アメリカ」(岩波新書)で食品業界と米国農務省との間にある
回転ドアのしくみについて書きましたが、
FDA(アメリカ食品医薬品局)と業界の間にある
回転ドアも高速で回転しています。

日本はFDAやアメリカの医療を
疑いの目でも見たほうが…

宮崎

そうですね…それから日本は今TPPの動きが深刻になってきてますよね…。

はい。
TPPと、それから国家戦略特区と、先日閣議決定された
「患者療養申出制度」と、、、
医療については特に、同時進行でいま
猛スピードで進んでいますね。

宮崎

そのとおりです。
今、日本のマスメディアの中でも
そのあたりを把握して報道していないですね。

ええ、だから国民も知らないうちに次々に変えられてしまっています。

宮崎

そうですね…
あの3.11震災を境にそれがまた活用されてますね。
アメリカが9.11を契機にして、
この路線に進んでいるのと同じような構造がありますよね。

おっしゃる通りですね、
911について話した時、ある友人ジャーナリストは、
「911の当日亡くなった人の次に犠牲になったのは
アメリカのジャーナリズムだった」と言いました。
報道の自由も、今危機にあるものの一つです。

宮崎

それからもうひとつ、
アメリカ最高裁判所で出した「最低賃金法は違憲」という判決が
格差拡大を後押ししたと書いてありますけど、
アメリカの憲法は何か欠点、弱点があると
考えるべきでしょうか?

合衆国憲法には25条のような生存権が無い!

憲法自体に問題があるのではなく、
憲法が紙くず同然に扱われるようになってしまっている
今の体制が問題なのです。
政治と業界の距離が近くなりすぎて、
議会制民主主義も司法ものみこんでしまい、
やりたい放題になっています。
ただ、アメリカ憲法には
日本の憲法25条に該当するものはありませんね。

宮崎

生存権がね…。それはアメリカの建国の歴史からの流れでそうなっているのですか…。

アメリカ憲法の最大の核は『自由』です。
ただ先ほども言ったように、
憲法とは機能させなければただの紙にすぎません。
アメリカも昔は自由に各々責任を持って、良い形で、
貧しい人は教会が救うなど、
自費や助け合いの精神が医療を支えていた時代がありました。
自由な競争と万人へ機会の平等を与えるアメリカンドリームが、
あるところから巨大化した企業や金融業界の
「マネーゲーム」に組み込まれてしまったところから
おかしくなってしまったのです。

宮崎

それでアメリカは自己責任、個人の力に依拠していくという発展をしてきてしまった。

アメリカがというよりも、 「自己責任」「個人の力」というキーワードを
企業側にうまく利用されてしまったという流れですね。
このあたりは日本と同じですが。

宮崎

私たちはこれからどういうことをやっていくべきだと思いますか?

やはり知ること、伝えること、声をあげる事の3つが重要だと思います。
例えば国民皆保険制度は憲法25条ベースの社会保障であることすら、
ほとんどの国民は知りません。
私だってこの仕事をしていて父のことがあるまでは、
国民皆保険のことをそこまで正確に把握していなかったのです。
関心を持ち、知ることで世界は変わりますよね。
さらに歴史や構造を知ると、
ひとつひとつのニュースを見る目が変わりますから面白いですよ。
日本は常にアメリカの要望に影響されていますから、アメリカの変化を知れば、
次にどんな波がくるかもわかるようになりますし。

宮崎

本当に。

それと、日本には患者の代表として審議会に入れる
20万人の組織“医師会”があります。
医者=強欲というマスコミのイメージ戦略に乗るよりは、味方につけることの方が
患者側には重要だと思いますね。
それから一人でも多くの国会議員、自治体議員に医療制度について
正確に知ってもらうこと、患者側がメディカルリテラシーをつけること...
出来ることはたくさんあります。

宮崎

確かに出来ることはたくさんありますね。

医療を財源論だけで議論せず、もっと正確な情報を
提供したうえで多面的な国民的議論にしてゆくことも重要だと思います。
医療技術と医療機器が進化すれば高齢社会で医療費があがるのは当然でしょうが、
自己負担を上げ営利事業の側面を拡大するというやり方が、
本当に長い目で見たときに医療費抑制になるのかどうか?
健康な国民あっての経済成長なのか、その逆なのか?
国家にとって国民の「いのちと健康」とはどういう位置づけなのか、
そこから現場の「当事者」を交えて議論してゆく必要があると思います。

宮崎

そうですね。
日本でも医療から今度は介護のことが大きな問題になっています。
保険料を抑えるために、株式会社の介護事業者が
ますます効率優先になっています。

高齢化する世界の中で、介護は今後大きなビジネスになっていきますよね。
アメリカでも先生が今おっしゃったように、
株式会社経営の老人ホームの効率優先経営が深刻な社会問題になっています。
株式会社は株主報酬をあげる事が使命ですから、
できるだけコストカットで利益をあげる運営をします。
人件費や食費のカット、夜中はほとんど放置するなど、
もちろん日本でもこういう話はよく聞きますが、
問題は株式会社経営の場合、責任の所在があいまいになり、
訴えても勝てないケースが多く、規制の手が追い付かないことなのです。
彼らが日本に上陸してきた場合、
国が日本の高齢者を守りきれなくなるリスクがますます高くなる、
それがとても心配ですね。

宮崎

日本でも医療のことから介護のところまで全体の実像が
まだ正確にちゃんと報道されてないなと感じます。
それと、医療機関の消費税のことも書かれてましたね。
健和会はだいたい億単位です。
消費税が…。

億単位!大変な話ですねそれは。
医療と消費税の話は週刊現代の連載にも書いたし、
ラジオ番組でも取り上げたし、今回の本にも書きました。
この問題はマスコミが取り上げないので、
ほとんどの国民は知りません。
医療が非課税だから消費税が上がると病院に赤字が増えるなんて、
夢にも思っていないですよ。
医療機関の経営が苦しくなれば、
結局は患者である自分たちにしわ寄せが来るんですが。

宮崎

今後さらに厳しくなるので経営もきちっとやっていくことが非常に大事です。
同時に、今の制度の中で保険証が無いからということで
診察を受けられない方がいらっしゃるので、
生活保護を含めた社会的資源を活用していくことも…。
実は社会福祉法の中で無料低額診療制度というものがありまして、
お金がなくて医療機関に行けない人に、
無料ないしは低額で医療を提供する制度です。
その制度を活用して、私たちは
無料低額診療事業に取り組み出しています。

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