アメリカの医師たちのオバマケアへの反発は“廃業!?”

今先生がおっしゃったのと同じ質問を、
現場で何人もの医師にしたのですが、日本と同じように、
お医者さんががつがつと政治に関わるのは
あまりスマートではないといったような空気があるとの
回答が多かったですね。私たちは専門職であり、
政治と近づきすぎるべきではない、というような。

宮崎

ああ、ありますね、美徳みたいなやつがね。

それに、書類の事務処理だけでお医者さんはヘトヘトで、
政治のことを考える余裕と体力が自体もないです。
だからオバマケア成立後に
物理的に労働環境が悪化したお医者さんたちの中で、
廃業する人が増えています。

宮崎

廃業する?

はい。メスを置いて廃業します。
これ以上続けても自分が過労死するか、クリニックが倒産するといって。
治療をやりすぎると政府からペナルティーがくるし、
やらないで死なせれば訴訟、
肩には1500万円の医学部の学資ローンを抱えているし
…もう限界だ、と。

宮崎

そうですか、大変な状況ですね。廃業した方はどうするのですか?

評論家とか医療ジャーナリストや病院の相談役とか、
でも純粋に医療の世界だけでずっとやってきた人は
転職と言ってもなかなか大変で、
結局はどこかの病院の勤務医になる人が多いですね。
オバマケア後、開業医と勤務医の比率が反転しましたが、
勤務医は開業医よりもっと政府と保険会社にコントロールされるので
さらに過酷だと思います。
保険会社を通さない現金払いで、
本当に小さい規模だけでやる人も増えています。

宮崎

そうですね。医者って一般的にリッチだって言われてますけど…。

医者は強欲で儲けているというイメージを
政府広報費でキャンペーン

確かに中にはリッチな人もいますが、
それは本質ではなく、マスコミのイメージ戦略部分が大きいですね。
ほとんどの医師は平均1500万円の学資ローンの返済を抱えているし、
過剰労働と還元率の減額が進み、
いま非常に苦労されている方が多いのが現実です。
アメリカ政府はオバマケアのPRに
日本円で6億円もの政府広報費を使っていますが、
お医者さんのイメージをおとすようなものが沢山あり、
医師たちから反発の声が上がっています。
「医師は金儲けのために無駄な診療をいっぱいしている、
オバマケアで改革しよう」というような。
不況で生活が苦しいときにマスコミが「○○は儲けている」
と流すと国民は感情を刺激され、政策そのものからは目がそれますね。
医師たちがどんなに過酷な労働環境に置かれているかについては、
マスコミが取り上げないために
ほとんどの国民には知らされていません。

宮崎

そうですね。

診療コード2万8千⇒7万に!
動物関連のコードだけで100!

オバマケア後の状況を現場の医師たちに取材して一番びっくりしたのは、
診療コードの多さです。
今まで診療コードは約3万だったのが、
オバマケアで倍増し約7万になったと。
例えば動物関係の傷病コードだけで100ぐらいあります。

宮崎

動物関係で100というと?

例えば、飼っているセキセイインコに突っつかれた傷と、
羽でバサバサってやってついた傷はコードが違うなど、
とてもややこしいのです。

宮崎

そんなことまで…違うのですか…。それは医者が作ったんじゃないですね?

医療従事者ではなく政府が作りました。
入力するコードを間違えると一銭も入りません。
これはもうある意味冗談みたいな話で、
お医者さんは「オバマケアは医師たちに仕かけられた戦争」だという
言い方までして抗議しています。

宮崎

団体として声明を出すような動きはないんですか?

日本もそうでしょうが、医師の多くは政治に積極的にかかわろうとしない、
加えてオバマケア成立後以前にもまして事務作業の量が多くなり、
集団訴訟どころか自分自身が寝る時間もないほど
過剰労働になってしまっているのです。
お医者さんが声を上げない最大の理由は、
物理的に忙しくて余裕がないからなのです。

宮崎

そうなんですか。医者が忙しいのは日本も一緒ですが…。

デスクワークに追われ医者も声を上げられない!

宮崎

ここの制度のもとで、そんなすさまじいことが起こっているとは
日本で知られてない…。
日本の医療界の中で、アメリカの医療が最高だと多くの人は思ってますから。
その恩恵を受けているのは、一握りのリッチな人たちだけ…
ということですよね。

あるアメリカの医師は私に言いました。
「お金さえあればアメリカは医療天国だ。日本の医師の多くは、
アメリカの先進医療や進んだ新薬・医療機器の開発など
いいところだけ見て帰国するんだろう。
保険証を握りしめたまま医者の前で死ぬ患者や、
事務作業で過労死寸前の
普通の医師の現状を見る機会などないだろう」と。

宮崎

ERに押し寄せてくる様々な患者さんのことは
マスメディアやドラマで表現されているので、
一面は分かるんでしょうけど…。

TVドラマは業界がスポンサーですから表面をなでるだけですね。
一方、マイケルムーアの「シッコ」というドキュメンタリーで公開された
医療現場の現実は、大変インパクトがありました。
もちろん、あの後ムーア監督はひどいバッシングを受けました。
日本もそうですが、本当に知るべきことほど、
知らされていないですね。

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