日本国憲法の「改正」は世界に影響する

露木

話はまた変わりますけど10年ほど前に
『映画 日本国憲法』の上映を柳原病院のイベントで
企画した際、監督お招きしてお話を伺うことがありました。
そこで、とてもすごい視点だなと思ったのは、
日本国憲法の問題は、日本だけの問題じゃないと。
アジア、世界の問題だと仰ってました。
日本国憲法を国内の問題として変更してしまうというのが、
世界の人々にとっても影響があるという視点を
ずっと持ち続けていきたいですね。

DVD「映画 日本国憲法」©︎2005 SIGLO
憲法とは誰のためのものか、戦争放棄を
誓った前文や第9条をどう考えるのか。
世界の知の巨人たちへのインタビュー。
ユンカーマン

残念ながら、12年前に出来た映画なんですが全然古く感じないんですね。

露木

そうですね。安保法制とか色々改悪されてる部分もありますけど、
まだまだ頑張ってるなという意味でも、
見返す意味がとてもあると思いました。

ユンカーマン

そうですよね。12年間経った今でも憲法は変えられてない。
だから僕はそういうところに希望を持ってます。
たとえ憲法改正が国会を通ったとしても、やっぱり国民投票の中では、
それをノーと言える日本の基盤がまだ残ってるんだと僕は思うんですよ。
やっぱり中国や北朝鮮に脅威があるとしたら、
どうやって向き合うかを考えなければいけないんですね。
軍事予算を増やしていっていくことによって何が起こるか……。
軍事力を増強することが解決方法にはならないんですよね。
日本の市民は、皆それを分かっていると思うんです。

露木

その通りだと思いますね。
お互いにね、北朝鮮が怖いから、ミサイル配備しなければいけないとか、
尖閣がどうだとかっていう、
そういう思考をする政府の人間が話し合っていて、
人々の生活は切り捨ててでも、
軍事費を上げていく構造があるのかなって……。

ユンカーマン

そうですね。アメリカを見ると、全く同じことが言えると思うんですよね。
規模は日本の10倍位大きいですけどね。
対立は軍事力で解決しようとする考えですよね。

露木

そういう意味で、ちょっとまたアメリカの話しに戻ると、
アメリカっていうのは、戦争をしないと生きていけない国なんでしょうか?
戦争が一つの産業になってるという言い方をすることも……。

ユンカーマン

もちろんそうです。戦争で儲かっていく……。
今でもイラク戦争が終わったということにはなってるんですけれど、
シリアで毎日のように爆弾落としたりして
紛争が深刻になってきて、その爆弾を作ってる会社の株がずんずんと上がって、
儲かっているんですから……。
戦争は儲かるから、なんか言い訳が無いとダメなんだというような仕組みに
なっていると思うんですよね。
それで、何年か前だったんですけどね。
今もそうですが北朝鮮が一番脅威だという話がありました。
しかし北朝鮮は、アメリカで言えばオハイオ州のデイトン市という都市と
1年間のGDPが同じぐらいなんです。

露木

十分理解できます。

ユンカーマン

だから、本当に貧しい国なんですよ。
貧しい国に対して、アメリカは史上最強の軍隊を持っているのに、
なんで怖いのかということを
考えなければいけないだと思うんですね。

露木

日本でも、同じ論調があるんですけどね。
なぜ、攻めてくるとかなんとか……。
現実的に考えればないと思いますね。

ユンカーマン

中国だって攻めてくると言うことはあり得ないんですね。
そういう威嚇や脅威を利用して動いている人たちがいるんです。
だからさきほどの「アメリカが戦争しないとやっていけない国なのか」という
質問ですけど、経済的にはそういうところがあるんです。
もう一つは、政治的なところがあるんですね。
政治家の中で「これが本当は脅威じゃないんじゃないの?」とは言えないんですよ。
政治家としては、敵に対して弱い立場に立っている、
weak on defense(防衛弱虫)は致命的なんです。
誰もそれは言えないんです。
だから、政治家が一番悪いなと僕は思うんですね。
それともう一つが、日本でもそうだと思いますが、
戦争で亡くなった、遺族の方々のことを考えると、
色んなことを言いずらいところもあるんですね。

日本は“いつか来た道に”後戻りしてはいけない

ユンカーマン

だから、靖国問題でも、そこが根本的にあるんですけど。
それを考えてみれば、それ72年前の戦争を経験した日本でも問題なのに、
アメリカは戦争をやり続けてきたんですよ。
その間、戦没者の遺族ということがどんどん出てくるんですね。
朝鮮戦争・ベトナム戦争・イラク・アフガン戦争というように……。

露木

ああそれ、すごい視点ですね。
日本の遺族は基本的に増えてないんですよね。戦争してないんですから……。
それに対して戦死者が増え続けているアメリカは、
どんどん遺族が増えてるわけですね?
なるほど。

ユンカーマン

だから、ベトナム戦争で“無駄に死んでしまった”ということは言えない。
遺族は皆傷つくんですから。
イラク戦争だって同じことですよね。

露木

戦争は間違いとは口に出来ないことになっちゃうんですよね

ユンカーマン

だからそのことは、選挙の中で取り上げてこないんです。
誰も、“間違った戦争”とは言わないんです。
そういう文化になっちゃうんですよね。
だからこそ、日本があの道を辿り始めれば、
もう後戻りは出来ないというような事になってしまうんじゃないか
という気がしますね。

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