ユンカーマン

だから僕は、あの映画を作ったときに、
色々な先生の話も聞きに行きました。
その頃、全国的に憲法ってなんなのか、
どういうことなのかということを考えるきっかけがあったし、
かなりの市民の考え方が変わってきて、
理解が深まったということを感じました。
だから、あの映画のおかげではなくて、やはり「9条の会」とか、
いろんな形で市民の中で続いている運動が大切なんだと思いますね。
繰り返しで言うんですけど、憲法を守るというのは、
戦争が嫌だということではなくて、
戦争が無駄だということだということで考える必要があると思うんです。
この10年間で、そういう認識が広がった……。

露木

そう思います。

ユンカーマン

以前の、戦争の体験者っていう方々が、
もう二度とそういうことを経験したくないと言いますが、
更に、二度とそういうことをさせないということに
ならなければいけないと思います。

露木

そこに踏み込まなきゃいけないですね。

アメリカは戦争によって、テロ組織を作り出して

しまったのかもしれない……。

ユンカーマン

はい。僕はアメリカ人だから、僕の国がそういう教訓を得られないというのが、
悔しいことなんです。
例えばイラク戦争がなかったら“イスラム国”はなかった。
そういったテロ組織が、イラク戦争があったからこそ生まれた……。
15年前にはそんなものはなかった。
アメリカが作ったんですよ。

露木

そういう歴史の見方をしながら、そういうところに踏み込まないと、
なかなかちゃんとした議論もできないし、
真実を見て、深く知るっていうことが必要ですね。

ユンカーマン

そうですよね。

露木

日本人は過去を忘れてしまったのだろうか……。
そういう部分は自分たちをみてもあるとは思います。
でも、戦争はあまりにも酷いことですからね……。
それなのに、今、この時期に戦争へすり寄っているという、
こういう日本人とはいったい何なんだ
という気はします。

ユンカーマン

いや、ぼくは、日本人が特に忘れているということはないと思います。
ただ、戦争の体験というのはつらい話なんですね。
なかなかしたくないということはあるんだと思うんです。
沖縄の中でも、あの沖縄戦を考えたくない人がたくさんいるんです。
この『うりずんの雨』を沖縄で映すと、
やっぱり、そういう、つらいということで、
観たくない人がたくさんいます。

露木

監督は今後、映画の企画とかアイディアとか、
何かお考えになってることはありますか?

ユンカーマン

今、『うりずんの雨』の英語版を製作しました。
去年の10月にDVD公開しまして、その方の上映活動が続いてるんです。
来週はハワイに行くことになっています。

露木

ハワイはまたちょっと、感情が違うんですかね、アメリカの本土と。
そんなことないですか?

ユンカーマン

ハワイというのは複雑なところなんですけどね。
とても沖縄に似てるところがあるんです。

露木

本土との関係で。

ユンカーマン

そういうところもあって。あとは、同じように基地が集中してるんですよね。
やっぱりそういう軍国主義的な文化というのもあるんですよね。
とても複雑なところだと思うんです。
それにハワイでは、沖縄出身の人が多いし、
沖縄のことに関心を持ってる人がたくさんいますからね。

露木

ハワイですか、それは楽しみですね。
もっともっと多くの人に広げ、観ていただきたい映画です。
今日は、とても有意義なお話をお聞きすることができました。
ユンカーマン監督の平和についての真摯な姿勢に大変感銘をうけました。
そして、日本を好きでいらっしゃることを大変うれしく思っています。
私たちも、よりよい社会のために、様々なことに関心を持ちつづけて
いかなければと思っています。
次はどんなテーマに、監督が取り組むのかとても楽しみにしています。
更なるご活躍を願っています、ありがとうございました。

ユンカーマン

こちらこそ、どうもありがとうございました。

         
DVD&BOOK「沖縄 うりずんの雨」
©2015 SIGLO
http://www.cine.co.jp

「沖縄 うりずんの雨」
キネマ旬報文化映画ベスト・テン第1位/毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞/日本映画ペンクラブ賞(シグロ)

監督:ジャン・ユンカーマン 
企画・製作:山上徹二郎 製作:前澤哲爾 前澤眞理子 撮影:加藤孝信 東谷麗奈 Chuck France
Stephen McCarthy Brett Wiley 音楽:小室 等 配給:シグロ ©2015 SIGLO
「老人と海」で与那国島の荒々しくも美しい自然と風土を捉え、「映画日本国憲法」で平和憲法の意義を訴えた、アメリカ人映画監督 ジャン・ユンカーマンが真の平和を求め、不屈の戦いを続けている沖縄の人々の尊厳を描いた渾身のドキュメンタリー。

1945年4月1日、アメリカ軍が沖縄本島に上陸。6月23日(現在の慰霊の日)まで12週間に及んだ沖縄地上戦では4人に一人の住民が亡くなりました。本作は、当時同じ戦場で向き合った元米兵、元日本兵、そして沖縄住民に取材を重ね、米国立公文書館所蔵の米軍による記録映像を交えて、沖縄戦の実情に迫ります。また、戦後のアメリカ占領期から今日に至るまで、米軍基地をめぐる負担を日米双方から押し付けられてきた、沖縄の差別と抑圧の歴史を描き、現在の辺野古への基地移設問題に繋がる、沖縄の人たちの深い失望と怒りの根を浮かび上がらせます。

 
 

 

NEXT Intervew→
12345

 

TOPへ